プロローグ
この町には「香り」がある!
朝焼けに混じる、パンの匂い。
けれど、この町の住民は知っている──
あれが「ただのパンじゃない」ということを。
それは人生の焦げ目が
バターに包まれたような
香ばしくて甘い香り。
そう……この香りの正体は、あの男だ。
名前を聞けば、空気すら背筋を伸ばす。
その男の名は──
ジョニー・ジェンキンズ!!!
かつて「鉄の馬」にまたがり
誰もが恐れ、誰もが惚れた男。
殴るより先に、目で黙らせる。
語るより前に、背中で信じさせる。
殴る価値もねぇ世界に、拳の代わりに哲学で答える──そんなヤツだった。
だが……あんた、想像できるか?
そのジョニーが、今、何をしているとぉぉ思う!?
──「パン屋」だ。
フザけてると笑ったか?
いいや!フザけてるのは、
夢を腐らせ、希望を諦めたこの世界の方さ!
ジョニーは、焼いてるんだ。
反逆のレシピを生地に練り込み
情熱で発酵させ、
黄金色のクラストを焼き上げる。
表面はパリッ、心はふんわり。
まるで「魂に焦げ目を持つ」
すべての人間へのラブレター。
あいつの生き方そのまんまだ。
店の名は──
BIKER'S BREAD
バイカーズ・ブレッド!!!
人生の痛みも、希望も、
全部、一斤に詰め込んで、
焼き上がったその瞬間に、
「食ってみな」と黙って差し出すのがジョニーだ。
パン屋と呼ぶには荒々しすぎる!
革命家と呼ぶには、美味すぎる!
ブルルウゥゥンン!……
伝説のはじまりは、いつだって重く、静かで、
心臓が先に震える。
さあ、アイドリングは済んだ!
心の回転数が上がってきた!
もしあんたの人生に、まだ焦げ目が足りねぇと感じてるなら──ちょうどいい、今から始まる!
焦げすぎたヤツ?ああ、そいつはもっと最高だ。
パンだって、表面が少し焦げた方が、捨てるには惜しいほど美味いんだ。
むしろその苦みこそが旨味になる。
ジョニーはそう言ってたぜー!
焦げちまった人生に、意味がねぇと思ったら、
ジョニーのパンを喰ってみろッ!!!
あんたの傷だらけの過去が──味に変わる瞬間を、今、焼き上げているんだからな!
さあ……
人生(ストーリー)の一斤、召し上がれ!
ああ、俺かい?
俺の名は「クラスティ・コメット」。
元ストリートレーサー、今は焼き立て専門の
パン屋の追っかけだ!
パン生地のように温かくて
バイクのマフラーのようにアツい男
「ジョニー」の生き様に惚れ込んじまってな……
昔むかしなんてセリフ、アイツには似合わねえ。
でも、どうしてもこの話を始めるなら、こう言うしかない。
あれは、確かに“伝説”の始まりだった───
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第1話 「パン屋の破産危機。~町のバイカークルーとの奇妙なコラボ~奇跡のパンとロゴの物語」